私のような技術系の経営者?にとって自社製品の販売ルートに関する問題は非常に扱いにくく面倒な問題だ。
メーカーS社と販売会社A,B,C,DとユーザーU社の間の商取引
事例としてAがUにSの商品を納入していたが、UがB,C,Dにも見積もりを取り、UがB経由での購入を希望した場合の対応について
前提条件
①商品は B to B のニッチ市場における市場支配的な商品
②商品は一般商品であり特注品ではない。
③A,B,C,D社は共にS社の商品を扱っている対等な立場。
※AがSに訴えてBからUへの商流を止めるのは独占禁止法違反。見積もり等の接触をさせないのも違法。
※SとAがUに対してのみの独占商流契約を結ぶ事は一般商品である以上、困難。UにはA~Dを選ぶ権利があるしSがAを優先して商品供給し、B~DからUへの商流を止めるのは違法行為となる可能性あり。
※特殊品ならSとAとUが独占商流契約を結ぶ事は可能。しかしこれだけではSやUにとって何のメリットもないので、Sは最低販売数を契約に入れるとか、最大再販価格の制限を入れなくてはならない。またUはBやCやDから購入するよりも有利な条件でないと契約を結ぶメリットがないだろう。なお有利な条件とは価格もだが、価格以外のサービス等も評価される。
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つまりある販売会社がユーザーにS社の品物を納めている場合、それを理由に他の代理店ルートからの見積もりや商品供給を止めるなど商流をメーカーSが操作する事は違法行為となる。
販売会社により卸価格に差を付けるのも外国では問題になるらしいが、国内では慣習として存在する。しかしこれも理由なく行うのは危険。理由が説明できるようにしておくべき。例えばA社はC社に比べ売上高が5倍だから量産効果で原価が下がっている。そのため卸価格が安いなど。
要するにA~D社の競争はユーザー利益の為に必要なこと。この競争は価格や各種サービスの差などで行う必要がある。商流を操作して正常な競争を妨げると独占禁止法の問題が出てくる。
Aが最初に商談を持ち掛けたから、とか実験など導入に必要な協力をしたから、などの理由でAに商流の優先権が生じるなどということはない。ここでもユーザー利益が優先される。このような理由でAがSに対してB,C,D社への見積もりや商品の供給を止める様に要求するような事はあってはならない。
AがUに各種のサービスをして元手がかかっているのだから、という理由で商流の優先的な立場をSに対して要求するのはSに違法行為をするように要求している事になり、商道徳上はもちろん法的にも問題である。
AがUに色々なサービスをしたのなら、それはAとUの間の問題でありAはその事をUに訴えて商流を維持、確保するべきものである。それでもUがAからの購入よりB,C,D社からの購入を希望したらAはそれを認めなくてはならない。
※上記の3社間契約を結んだとしても、Uの下流に更に別のU1,U2,U3が存在する場合には、これらに対する独占商流は契約外となる。これについてはUとU1,U2,U3間の商流契約によるしかない。もちろんS-A-U-(U1---)の4社間契約もありえるが、たぶん現実的ではない。
つまり我々はA社の言うなりにA社以外のルートを止めたりすると、U社やB~D社から公正取引委員会に訴えられ、指導や罰を受ける可能性があるので、注意しなくてはならない。