6ユニットタイプ。200v-6kw ランプを1.2kw品に差し替えれば200v-7.2kw
水冷、ブロア空冷の両方式が可能な仕様
2.この新製品の存在理由
この新製品ブロック化ラインヒータのメリットは明確であり非常に強力な商品である。メリットを列記すると下記があげられる。
①ブロック化で長大なヒータが構成できる
どの様な長大なヒータでも単一の製造マニュアルで簡単に製作可能なので、ユーザーに対して明確で適切なサポートができる。長大な加熱用途にも短納期で確実な導入成功を約束できる。また大寸法のものは金メッキが出来ない場合が多いが、この方式ならどんな寸法でも金メッキが可能であり、省電力に寄与する。
②長大なヒータでも供給電圧を低くできる
従来の構造では長大なヒータを作ろうとすると供給電圧が高くなってしまい600vとか1200vとかの供給電圧にする必要があった。しかしこのブロックタイプなら数十kw,数百kwのヒータでも200v,400vが採用できる。
③長期に渡り交換ランプ供給が可能。またランプ交換が容易
フィンテック社で標準的に扱っているランプを採用しているので在庫が常にあり、しかも長期に渡り安定的に供給可能。ランプ交換も簡単である。
④長大ヒータでも輸送しやすく現地組み立ても容易
2m~3mのヒータになると従来方式ではランプが壊れやすく輸送が大変であった。しかしこの方式ならランプは小さく丈夫なので輸送の問題がない。また長大なヒータをそのまま輸送しなくても詳しいマニュアルがあれば現場で現地スタッフが組み立てる事も可能なので、ヒータは小さいブロック状態で輸送することも可能。
⑤細かいパワーの分布調節が可能
長いラインヒータは、中央に比べ端の方が温度が下がるのが一般的だ。これの対策としてロスが増えるが必要以上の長さの発熱長とし、端の方は捨てる方式を採用する事が多い。
しかしこの方式なら端の方だけ出力を上げてフラット化する事も簡単。さらに大きさの異なるワークが混在して流れるコンベアの場合などは、小さいワークの場合には発光範囲を狭くして無駄な電力消費を抑えることができる。
3.今回の試作で確認できた配光分布等のデータ
このヒータは通常のラインヒータの様に光源が線状の連続発光体ではなく、飛び飛びの発光l体で構成される。そのためこれで照射すると大きな配光ムラ、温度ムラができるのではないかと心配される人もおられる。しかしその心配は全くない。
これは配光計算シミュレーションでも確認されていたし、更に今回の試作品の測定でも全く光源が飛び飛びであることに起因する配光ムラは見られなかった。これは温度測定データからも、また下の写真からも明らかである。
ただし発行体のサイズが従来タイプよりかなり太いので、集光幅は従来タイプよりかなり広く、約15㎜幅となる。そのためパワー密度はやや低く、加熱できる温度は1200℃程度にとどまる。
中央部に見える電線状のものはランプ温度測定用の熱電対線。実際の製品には無い
35%電圧で点灯。今回は前面ガラスは装着していない
95%電圧で点灯 右端に見える熱電対線はミラー温度測定用
4.水冷方式による運用
このヒータは冷却が必ず必要である。その方式には主に水冷方式と空冷方式の2種類があるが、ここでは水冷方式で稼働させた場合の各種情報を報告する。このヒータの運転条件は、定格の95%電圧(5.41kw)で通電し、冷却水を1.8L/min. 流して照射面やミラー、ランプ温度などを測定した。
4-1. 水温上昇
19.4℃→31.7℃ at 1.8L/min. これより持ち出しエネルギーを算出すると
P=4.2J/g/K×30g/s×(31.7-19.4)K=1550w
このヒータの熱効率(総放射への変換効率)を計算する場合、熱ロスはほぼ全て冷却水が持ち出すと考えて良い。すると、このヒータの熱効率は 熱効率=(5410wー1550w)÷5410w=0.713(71.3%) これはこの様な特殊なミラーを組み合わせたヒータとしては悪くない数値だろう。ランプ単体の熱効率は85~90%なので、このヒータの特殊集光鏡による熱損失増加は15~20%にすぎない。
4-2. ミラー温度上昇
最も温度上昇しやすい場所(横向き点灯でランプ発光体の上側)で約115℃であり、上昇としては約90degであった。これは十分に安全領域である.
4-3. ランプのシール部温度上昇
ランプシール部温度測定のためにランプのアルミベースにΦ4の穴をあけ、そこにΦ0.32の熱電対を挿入して無機接着剤で充填固定して、ラインヒータに組み込み温度測定した。すると温度は485℃に達した。これは数十時間以内にランプ封止部が破損して使用不能になる事を意味する。
対策として水冷に空冷も組み合わせる事にした。現在有るブロア空冷用の接続口を利用し、片側を塞いで供給エアーの全てがランプ部に流れる様にした。結果はエアー流量が300L/min.(1ユニット当たり50L/min)であれば十分に安全である事が分かった。
水冷+冷却エアー100L/min. ランプシール部温度 400℃ → 寿命制限300h 必要圧力 0.02kPa
水冷+冷却エアー150L/min. ランプシール部温度 355℃ → 寿命制限2000h 必要圧力 0.05kPa
水冷+冷却エアー200L/min. ランプシール部温度 320℃ → 寿命制限5000h 必要圧力 0.07kPa
水冷+冷却エアー300L/min. ランプシール部温度 277℃ → 寿命制限なし 必要圧力 0.16kPa
4-4. 水冷方式での結論
エアーを150L/min流せば2000時間程度の使用に耐える。また200L/min.であれば3000~5000時間に耐え、300L/min.であればランプシール部温度がランプ寿命を制限する事は無くなる。そのためできれば300L/min.程度流しておくべきだろう。これは1ユニットあたり50L/min.である。したがってユニット数Nの場合には必要エアー流量は50L/min×Nとなる。
しかし冷却エアー生成にコンプレッサーを使うのは経済的では無い。この様な低い圧力(0.2kPa程度)であれば各種のブロアが選択可能になる。
冷却水量は今回はヒータ1kw当たり約0.3L/min.流したが、これはわが社の一般基準であるヒータ1kw当たり約0.5L/min.を適用しても安全サイドなので問題ない。
5.ブロア空冷方式による運用
水冷は強力な冷却方法であるが、場合によっては採用しにくい場合もある。その様な場合にはブロア空冷方式を採用する。これは比較的圧力の高いターボブロアなどを使用し、Φ50ホースでラインヒータに接続して冷却するものである。
今回のヒータの運転条件は定格の95%電圧(5.41kw)で通電し、下記のブロアを接続して冷却しミラー、ランプ温度などを測定した。
今回のブロアは淀川電機製作所の高圧ターボファンDH2SL。このブロアは60Hzでは消費電力200w、最大風量4m^3/min.,最大静圧1.53kpaのものである。これをΦ50のアルミダクトホースでつないだ。
5-1. 冷却エアーの温度上昇
排気の温度は75℃であった。入口温度を30℃とすれば、そしてブロアが1.7m^3/min.のエアーを供給していると仮定すれば、エアーが持ち出す熱エネルギーは
P=0.02×(75-30)K×1700L/min.=1530w となり、この程度の仮定条件でまあまあ妥当な数値になる。つまり実際に流れているエアーは1.7m^3/min.程度だろう。このときのエアー圧力は1.2kPaであった。エアー通路の抵抗が大きいためにエアー流量が大きく制限されている。もう少しエアー通路を広げれば抵抗が減り、エアー流量が増え、ミラー温度が下がるだろう。
対策として内部のt=8㎜のアルミ板をt=3㎜のSUS板に変更してエアー通路を広げる事にした。更にエアー通路のカバーも2㎜高くしてエアー通路を広げた。これによりエアー通路は約1.4倍の面積になり、エアー入口金具、ホース断面積とほぼ同じになる。
5-2. ミラー温度上昇
ミラー温度は冷却エアー入口側付近が低く、約130℃、それがエアー出口側付近では約200℃となっている。この原因はエアーが出口側に行くほど高温になるので冷却能力が低下する事に加え、かなりのエアーがエアー通路からランプ側に漏れるため、出口側に行くほど流量自体が減少するためと思われる。
ミラー温度が200℃に達するのは許容できないわけではないが、一応の高温限度を250℃-MAXと決めているので、余裕はない。できればもう少し低くしたい。しかしもっと低い電圧で使われる場合やON-OFFで使われる場合にはこれで十分だろう。
5-3. ランプのシール部温度上昇
ランプのシール部温度は262℃であった。水冷のときにもランプの空冷を行ったが、この時のエアー流量300L/min.よりもランプ温度が低い。この事からもボディ冷却用エアーが主エアー通路から300L/min.以上漏れてランプ側に流れていたと推定される。
ブロア空冷の場合は漏れエアーによりランプが十分に冷却されることが明確になった。これならランプの熱トラブルは無いだろう。もう少し工夫してランプ側に漏れるエアー量を抑えてやれば、ミラー温度をもう少し抑えることができるかもしれない。
ブロア空冷の場合はヒータ電力1kwあたり0.4m^3/min.以上、その場合ブロアの定格的には2倍の0.8m^3/min.以上が必要だろう。しかしブロアはエアー圧力に余裕が無いので単純な比例計算では対応出来ないかもしれない。大出力ヒータに対応するときには注意を要する。
6.結論
この新製品ブロック化ラインヒータの試作品評価は、大きな改善点としては水冷方式の場合にランプの空冷を加えるだけであり、それさえ実施すれば製造ラインでの使用に十分耐える能力を持っていると判断した。
このヒータは従来、ハロゲンランプ加熱が適用外だった分野にも採用される可能性があり、1つの大きな分野を開拓するかもしれない。