通常のメーカーの組織は基本組織として製品開発→製造→販売という直接部門(ライン)で構成される。さらに普通の会社なら間接部門(スタッフ)として技術、事務部門等がある。
フィンテック社は小人数なので、これらの全てには人員を配置できない。製造会社として機能するには最低限、製造部門があれば成り立つ。その他の機能は製造部門が兼務したり外部委託することでカバーできるだろう。例えば販売は代理店、事務は会計事務所、図面作成は設計事務所の様に。
尚、工場を持たないファブレスという形態の製造業もあるが、フィンテック社はその方向は目指さない。重要な技術は自社工場で生産することで技術情報流出を防止し、さらに出来るだけ特許でも防衛する。
フィンテック社の特徴的な組織運営は、外部の代理店等に販売の多くを委託し、複数の製造リーダーがそれらと直接やりとりして「見積もりー受注ー製造ー納入ー改良ーアフターサービス」を行う。以前は多くの他社と同様に社内に代理店と製造部門の間に入る営業(生産管理)担当を入れていたが、この方式は合理的でないだけでなく、各種の障害があった。
もちろん全ての代理店やユーザーに対して製造リーダーが直接対応できる訳ではない。これに対応できる代理店は歴史の有る親しい関係の代理店に限られる。
代理店側は欲しい品種により交渉する製造リーダーが異なるので、使い分けていただく必要があるのは少し負担増だろう。しかしそのマイナスを十分に上回るメリットを感じていただけるはずだ。例えば見積もり回答、納期回答、製品納期の早さ、正確さなど。不具合の対策なども早く確実に進んでいるはず。
それに社内営業(生産管理者)を仲介させる場合、その者の能力に大きく依存してしまう。客先と当社担当の人間関係がうまくいかない場合は商売自体がつぶれることもある。つまり窓口が一つでは競争原理が働かず客先の利益を損なう場合があり、それはわが社の不利益にもつながる。
その点、製造責任者は複数いるので弊社の様な10人以下の会社でも窓口は3~4人確保できる。さらに売上歩合制で収入が増えるので、商売の成否が自分の収入に直結してくるから客をおろそかにできない。また自分の能力の限界を十分に把握しているので対応に無理がなくなり、客先とトラブルになる前に他と相談してトラブルを事前に防ぐ傾向が強い。
また客先が、ある製造責任者とうまくいかないと判断したら交渉相手を他の製造責任者に変える事も可能だ。その選ばれた製造責任者は営業面だけを担当して実際の製造は他の製造責任者に内部的に回すこともできる。またどの製造責任者も対応品種の得手、不得手はあっても、どの様な品種でもやれないことはないので、仕事自体をとってしまうことも可能だ。ここでも強い競争原理が働き客先の利益につながる。製造責任者を変える事でも対応できないトラブルの場合には社内営業担当者も1名いるので、そちらのルートも選択できる。それでもだめなら社長直接ルートもないこともない。 ・・・
この方式は製造リーダーに高い能力が要求される。しかしやらせてみれば案外やれるものだというのが実感だ。立場は人を育てる、というのはかなり正しい。また高い能力を身に着けた人は自分の裁量範囲が大きく、がんばり次第で収入も大きく増やせるので、やりがいの有る仕事になるだろう。
製品開発、技術開発を行う人材は、常に確保できるか不確実だろう。この業務に必要な能力を持つ人材は数十人に一人以下、特に画期的な新製品を開発できる人材はもっと少ない。
しかし技術サービスについてはウェブページやクラウド上に各種技術情報を蓄積しており、どこにどの情報が有るかを把握しておけば、技術サービス担当者がいなくても製造リーダーや販売担当(代理店、社内営業担当)でかなりの部分はカバーできる。また新製品開発についても小改良で済むプチ新製品は外部設計事務所等に設計依託する事で対応できる。
画期的な新製品については、それを出来る人材がいない状態が生じたとしても、現有技術資産で少なくとも十年以上は会社を存続できるだろう。その間に優秀な人材を探す、又は育てる努力をする事になるだろう。
厳密なマナーを求めるつもりはないが、恥ずかしくない程度の最低限のマナーは必要であろう。また仕事を進めるうえで必要なツールに対する私の考え方を示す。
①特に電話応対の場合、社外の人に対して社内の者を呼ぶ場合は「社内は身内」として扱うこと。基本的に「さん」付けは不要。社内の者を「おられません」「言われていました」などの言い方をすると、身内を持ち上げるので相手を相対的に低く位置付ける事になり良くない。「おりません」「申しておりました」などの対応が普通に出来れば我々の様な零細企業でも一流の会社っぽく見える。
②社外の人に対する呼び方としては「○○さま」が無難。マナー本によれば他社の社長や部長は、それ自体が敬語だから「○○社長おられますか?」でよいとされる。しかしこれも場合によっては「さま」付けの方が私は良いと感じる場合がある。大社長様に向かって「社長おられますか」は少し抵抗がある(これは私だけかもしれない)。ただし「社長さん」「部長さん」は軽い表現なので絶対に使ってはならない。
③社内の人に対しては誰でも基本的に「さん」付けで良い。「さん」無しの役職名で呼ぶのは構わないが最近の流行りではない。「くん」は仕事の場では使わないこと。これは相手を見下した呼び方なので、例え未成年の新入社員であったとしても社会人に対する失礼の無い呼び方とは言えない。「ちゃん」は論外。
➃電話は即時性という非常に優れた面があるものの、それ以外はメリットがない。遠隔コミュニケーション手段として最も効率が悪く、伝達が不確実で記録も困難なので証拠能力も無い。また電話をかけるのは相手の時間を一方的に奪い、迷惑をかけるかもしれない。さらに電話は会話音声が漏れるので、周囲の人の仕事を妨害する。従って意識的に使用をひかえて行くべきだと思う。
現在の最も効率的な遠隔コミュニケーション手段はEメールだろう。長文でも可能だし、写真等の添付も出来る。リンクも使える。通信速度は速いしコストはゼロに近い。ある程度の証拠能力もある。だからこれを活用し、電話は急ぎの時やEメールを読んだかどうかの確認などに使うのが良い。
FAXはアナログなので、保存性や引用しやすさや閲覧速度に劣り、画像の精細さも低い。カラーも使えない。文書の証拠能力も低い。速度も遅いし送受信コストも高い。従って使うべき通信手段ではない。しかし現実の社会にはEメールが使えない相手もあり、なかなか廃止できないのが現状である。また送りたい書類が紙製の出来合いで、ごく簡単な文書の場合にはFAXの方が手軽で早い場合もあるので、完全否定も出来ない。
FAXの不使用を勧める一環でもあるが、紙の使用は極力減らさなくてはならない。これは森林資源の保護の観点から重要だ。使用後、焼却されることを考えるとCO2排出抑制の観点からも紙の使用は控えたい。多くの場合は紙の形でなくても電子データの形で保存や利用は出来るだろう。
⑤たばこは禁止はしないものの、健康や清潔さに対する害を考えれば止めることを強く勧める。歩きたばこや灰皿のない場所での喫煙は当然の事ながら懲罰対象だろう。クルマを運転中のたばこは事故の原因になるので絶対禁止。
⑥トイレは男子専用の便器がない場合は小用であっても男性も座って使用するのがマナーだと思っている。自分の家なら勝手だが、他人も使う大便器に立って使用するのは不潔きわまりない。
実験によれば目には見えなくても半径1mくらいはしぶきが飛んでいる。それが後日分解して強いアンモニア臭を出す。立ち使用者がいなければトイレでアンモニア臭がすることはない。だからアンモニア臭がしたら数日前に誰かが立ち使用したと分かる。
臭いなどの実害以外にもしぶきが至る所に付着しているかと思うと、他の人は気分的にそんなトイレは使いたくないだろう。実際、トイレットペーパーあたりまで飛んでいる事が確認されている。トイレ使用後は使う前より綺麗に処理して出るのがマナーだ。しかし立ち使用してしまうと元の綺麗さに戻すのはほぼ不可能だろう。
⑦仕事中の私語は当然のことながら最少限にしなくてはならない。仕事に必要な会話であっても他の人の迷惑にならないよう、トーンを抑えた話し方にした方がよい。笑い声は特に気にさわり、迷惑になりやすいので注意しなくてはならない。
⑧各種のマナーや行動、言葉使いは適切な使い方を普段から日常的に実践しておくことが重要だ。必要なときだけ対応すれば良い、と思っていると必ず本番でボロがでる。
⑨仕事をしていると様々な問題が発生する。それらに対しては実直に事態を把握し、最も適切な対策を導き出して実践しなくてはならない。嘘をついて安易な方向に逃げるべきではない。嘘は嘘を呼び、収拾がつかなくなる。嘘も方便というが仕事の技術的、品質的な対応については、少なくとも社内的には「嘘も方便」はあり得ない。これは対外的にも基本的には適用したいが、現実には嘘を言わなければならない場面にも遭遇する。しかしそれでも嘘は極力ゼロにする努力をし続けなくてはならない。
3.仕事の進め方
常に自分の行動や仕事の成果をアピールしてほしい。そのための場所として fuji@のメールボックスを割り当てている。このメールボックスは全社員にオープンされており自由に読み書きできる。
我々の仕事で重要視しなくてはならないのは、如何に情報を活用できるかだ。何らかの仕事を始める前には、それに対する情報を集めて仕事の流れを整理してから取りかかるのが、失敗のない効率的な仕事の進め方であり鉄則だろう。
また仕事を進める過程で発生した作業方法の変更や設計変更等は記録に残して、次の受注、製造時に確実に反映されなくてはならない。
仕事の手順や使用する部材等のデータは当然のことながらデジタルデ-タとして作成され、保存されている。製造担当者はそれを引き出し、それに従い製造する。この際、不必要に紙に印刷するべきではない。ディスプレイ画面上で確認すれば済む事は、それで済ませるべき。
これは紙に印刷したものの方が使いやすいという人も多いだろう。全て否定はしないが多くは慣れの問題であり、少しの努力と工夫で紙の使用量を減らす事ができる場合も多い。
前記した作業方法の追記、変更や設計変更等は、このデジタルデータの書き換えが必要である。フィンテック社の基本方針として、1つの製品シリーズの各種製品図、製作図、部品図、実測データ等は1つの図面キャンパス平面上にまとめてある。そしてそれを原本用のLANDISKに保存している。さらにそれのコピーがインターネット上にあり、どこからでもアクセスできる。
このデータは許可された社員は何処からでもアクセス可能であるが、原本の書き換えは本社に連絡し本社LANDISKとインターネットディスクを変更しなくてはならない。
文書、図面は適したデジタルツ-ル(エクセル、ワープロ、CAD等)で作るのが望ましいので、これらツールの内、少なくとも一つか二つは使いこなせる必要がある。これらツールは会社で活躍したいのなら、がんばって身につけるべきスキルの最優先候補だろう。これらツールの詳しい使い方や勉強方法はユーチューブなどで多数提供されており、費用をかけずに初心者でも独学が容易だ。
仕事の仕方は先輩を見習い、見て盗め、などというのは一般ビジネスの世界では20世紀後半に消滅した。仕事は図面、文書、写真、ビデオなどの保存できるデジタルデータの形で伝達し継承しなくてはならない。
製造業で仕事のできる人になるには文書、図面を使って仕事を進めなくてはならない。口だけで済まそうとする人も多いが、そのような人は仕事が不確実になりやすい上に情報の蓄積ができない。そのため年月を経るほど情報を蓄積してきた人との間で、仕事を遂行する能力に差が広がっていく。
それでも頭が特別に良い人は若い間は何とかなるだろうが、脳の老化が進むと急激に仕事が出来なくなる。その点、文書や図面で仕事を進めてきた人は、多少脳や目や耳が老化しても時間をかければある程度カバーでき「仕事の出来る人」であり続ける事が可能だ。つまりこれは高齢化社会対策でもあるのだ。
特別に頭が良くもなく、文書や図面作成による仕事の進め方も全く出来ない人は、指示された作業を機械的にこなす単純労働者にしかなれない。もちろん単純労働者も必要であるが、このような作業は誰でも代わりが出来るので要職にはつけず、いつまでたっても給料が上がらない。そのうち誰かや機械に置き換えられ仕事を失う事にもなりかねない。
文書化、図面化はしているが、それをデジタルデータ化せずにメモ書きで自分だけのデータにしている人もいる。これは何もしないよりは、はるかに良い。しかし会社で推奨される仕事の進めかたではない。デジタルデータにして誰もが閲覧できる場所に保管しておけば修正、変更も容易だし他の人も利用しやすい。
「継続は力なり」と言われるが、真実であろう。ただし継続による経験が蓄積されてこそ力になる。その蓄積される場所が個人の脳だと一瞬にして壊れる事もあり、会社運営的には望ましくない。ノートパソコンのみに貴重な蓄積データを保存して持ち歩くようなものだ。
貴重なデータは安全な場所にバックアップを取り、必要とする人がそのデータにアクセスできなければ有効利用は出来ない。このような場所としてわが社はウェブページとインターネットディスク、LANディスクを充てている。
会議という意思決定方法は私は好きではない。多人数を拘束して議論するなど、無駄の固まりだ。ウェブ会議は多少マシに見えるが、本質は同じだ。私は関係者が誰でも閲覧できるメールボックスに意見や回答を入れる形の討論方式を推奨する。
これなら議事録をとる必要もないし、調査を要する質問などには、それなりの時間をかけて調査報告書付きのメールを入れれば良い。この会議出席者は時間に拘束されないので、本来の仕事の障害にもなりにくい。私は国会や地方議会もこの方式の方が良いと思っている。議事進行速度は数倍になり、議事進行のコストは1/10~1/100になるだろう。広く議事進行をリアルタイムで公開すれば、国民の直接的な監視も可能だ。
4.フィンテック社の経営方針
わが社はやや特殊ではあるが、通常の電気、エアーデバイスのメーカーである。言うまでもなく我々の様な製造業者にとって、最重要なのは販売戦略である。売る力がないと、いくら良い商品を作ったとしても企業として生き残れない。しかし販売力だけが突出した企業は我々の目指す企業ではない。世の中に強く必要とされる製品を供給できなければ存在理由が無い。
わが社の様なデバイスメーカーの製品の販売戦略としては
①代理店等の口コミなどで売り込む。
②装置設計者などにネットなどでアピールする。
③展示会や雑誌広告。
時代の流れからいうと②の比重が今後ますます増えていくだろう。現在でも8割以上が②だろう。代理店からわが社にくる商談も、その多くはわが社のウェブページを見た人からの間接的なつながりであったり、代理店の出しているウェブページを見たユーザーからの商談だ。
私はこれまでネット偏重であり、展示会ビジネスには懐疑的だったが意外に廃れない。わが社もその有用性について、見直すべきかもしれない。
設計者に最初にアピールするのに代理店の口コミ営業というスタイルは、今後あまり増えないだろう。これが重宝されるのはネットを使いこなせない人たちに限られると思われる。ただしこのような人たちは今後も一定数存在するだろう。だから代理店は必要であり続ける。更に商談が具体化する段階で、商品を納入するためのシステムとして必ず残るだろう。
設計ー試作ー商品化というプロセスは極端にスピードが早くなっている。多くのパーツ、デバイスは注文したら早ければ当日、通常でも翌日には入手できる。納期が1週間などというのは現在では遅い部類であり、1ヶ月などと言ったら商売する気がないと受け取られるだろう。
加工品も3D-CADの普及でさらに加速している。3Dデータがあれば即座に見積もりが得られ、ごく短納期で加工が行われる。3Dプリンターも加わって加工品の短納期化、低価格化が加速する。
この様な世界情勢下で設計者にわが社の製品を使ってもらうには、私自身が設計者になる事も多いので下記の要素が重要であると気づく。
※ わが社の商品がネットで高順位で検索できる事
※ できればモノタロウ、ミスミ、アマゾン、楽天などに出品されていること。
※ 大体の機能、サイズ、価格、納期がネット上でその場で分かる事。
※ CAD図がダウンロードできること。できれば3D-CADも。
ネットで見つからないデバイスは、現代社会では「存在していない」という状況に近い。従ってこれだけは絶対に避けなくてはならない。検索順位も重要であり10位以内に出てくればギリギリOKだが11~20位くらいだと認知効果は1/10程度、21位以下だと認知効果はゼロに近いと思う。
私の場合ネットで、その場で大まかにでも機能、価格、納期、図面が確認できない場合は即座に他を探す。他の設計者でもたぶんそうではないか。だからこれができないデバイスは、市場から無くなるだろう。
もちろん他に選択肢のない独自商品は強く、この限りではない。しかしその立場に甘んじてはならない。常にユーザーの利便性を向上させるような努力、姿勢が必要だ。
CAD図の無いデバイス商品は敬遠される。なぜなら設計者は自分が作図設計している装置図面に、そのデバイスを書き込まなくてはならないが、CAD図の提供が無いとPDF図などから寸法を読み取り、自分で作図しなくてはならない。ここで数十分間以上のロスが出る。普通の設計者ならCAD図のある同様の商品が選択可能であれば、間違いなくそちらを選ぶ。価格が多少は高くてもだ。
以上の様な状況から考えて、わが社が進むべき方向は、ネットへの露出を出来るだけ増やす。できればモノタロウやミスミ、アマゾン、楽天などでわが社の商品が出品されていること。
大体の価格や納期もネットで、その場で確認できる体制を目指さなくてはならない。またダウンロードできるCAD図を充実させなくてはならない。今後は3D-CAD図も重要だ。図面は見れれば良いのではなく、自分が作っている図面にそのまま移植できなければ殆ど意味がない。
また基本的な方向として、ユーザーの立場でものを考えない企業は、長期的には衰退、消滅するだろう。売り手の論理だけで考えてはならない。いかにユーザーの利益にもなるか、を常に考える姿勢が重要と考える。
またネットの普及した社会では、世界的にその分野で競争力がTop5、国内ではNo.1でないと生き残れないだろう。そのためには分野を絞って、その分野では常にNo.1をキープしなくてはならない。
メーカーにとって、高度に専門化して競争力をつけたいという専門指向性と、扱い商品の幅を広げたいという商売の拡張指向性とは常に葛藤があるだろう。しかし新しい分野で相応の努力をしても競争力が国内No.1、世界Top5になれる目処が立たないと予見できれば、諦めるという選択肢を選べる判断力、決断力がリーダーには必要だ。
わが社の場合は ①熱風ヒータ、②光加熱ヒータ を加熱分野の2本柱とし、それにそれらのコントローラを加えた商品という3本柱で商品群を構成してきた。
しかし現実的には、これらの分野の中で全て国内No.1 の競争力を確保できているわけではない。No.1だと確信できるのは、それらの中でも、さらにごくごく狭い分野だけだ。
だから我々は前記3本柱の分野で国内No.1と言える分野を少しずつでも拡充することに注力すべきだろう。これら以外の異分野からの誘惑に負けない心構えが重要だ。ただしどのような原則にも例外はある。異分野でも勝てる、と冷静な目で確信できたら、その方向に突き進むのも1つのリーダーの姿だろう。
しかし仮にチャレンジに失敗しても、本業が傾かない程度の配慮は最低限必要だ。それに専門外の分野についてはよくよく熟慮しなくてはならない。その業界では当たり前のことを知らずに独善的に事を進めている場合がある。あらゆる方法で調査し、知識のある人たちからの情報収集も大切だ。
情報収集では自分に都合の良い情報ばかり取り上げたがるのは人の常なので、注意しなくてはならない。古今東西、人は独りよがりになりやすい。それが経営者やリーダー、技術者だと失敗したときの被害が大きくなる。失敗から学ぶ必要もあり、慎重すぎるのはイノベーションを阻害するが、明らかに無駄で得るものの無い失敗は避けるべきだ。