宇宙ブラックホール内の景色と、閉鎖空間の出来るメカニズム。
それは我々には観測不可能な領域にある外部空間という広大で高温、希薄な空間が舞台。そこに発生した巨大な「宇宙ブラックホール」のシュヴァルツシルト半径内を、我々の宇宙空間は落下過程であると想定している。
本論は我々の宇宙空間が宇宙ブラックホールの近傍で発生し、それがシュヴァルツシルト半径を超えて落下していくとき、そこに住む観測者がどのような光景を目にするのかを図解して解説する。 曲がった時空間の図解は少し厄介だ。
この論法は光の到達時間が無視できるほど短い場合に適用される話。片道100億年とかのスケールについては「4.光路に関する考察」を参照。
2.宇宙ブラックホール内で裏返しの閉鎖空間ができる仕組みの詳細を図解
2-1.
観測者が星を観測した場合、その星の質量がさほど大きくなく、重力による光路の曲がりが無視できる場合には、星はそのままの大きさで見える。距離が十分に離れている場合も同様。
2-2.
大質量の星に観測者が近づいていくと、重力場で光の進路(光路)が曲げられ、重力レンズ効果で星が実際よりも大きく見える。下図で説明すると、観測者に届いた光の直線延長上に星が見えるので、作図してみると大きく拡大されることがわかる。

※注:図の光路曲線は正確ではない。しかし曲線の正確さは本論の結論に影響しない。重要なのは、ある方向に発せられた光が最終的にどこに達するかだ。
2-3.
大質量の星に観測者がさらに近づいていくと、さらに大きく光路が曲げられ、観測者に覆いかぶさるように広がっていく。下図では視界のほとんどを大質量星が占めているだろう。
※注:図の光路曲線は正確ではない。しかし曲線の正確さは本論の結論に影響しない。重要なのは、ある方向に発せられた光が最終的にどこに達するかだ。
2-4.
大質量の星に観測者がさらに近づいていくと、さらに大きく光路が曲げられ、観測者を包み込むように観測者の後ろ側にまで回り込むようになる。
※注:図の光路曲線は正確ではない。しかし曲線の正確さは本論の結論に影響しない。重要なのは、ある方向に発せられた光が最終的にどこに達するかだ。
2-5.
大質量の星に観測者がさらに近づき、そのシュヴァルツシルト半径を超えて落下すると、大質量星の表面が完全に観測者を包み込んでしまい、逃げ道のない閉鎖空間になる。
2-6.
実際には全方向に大質量星が見えるわけではない。大質量星と観測者の間には等距離の所に事象の地平面ができ、これに観測者は完全に包み込まれ、その中心に観測者が浮いているように観測される。
真っ暗で温度が絶対零度の事象の地平で包み込まれて、その中心に浮いているように観測されるとすれば、我々の宇宙での状況と同じだ。
宇宙ブラックホールの巨大な重力で反転した裏返し空間、つまりブラックホール中心核が全天を被い、その手前にある事象の地平で包まれた、真っ暗で絶対零度に近い閉じられた空間が、我々の認識する宇宙である。
事象の地平近くまでの距離は138億光年程度と見積もられている。
我々の銀河も非常に高速度で落下しているので、中心核までの距離は等速で縮まっている。それに伴い、我々から見て最遠方にある事象の地平面付近までの距離も縮まっている。
落下速度は無限遠から障害なく落下した場合、シュヴァルツシルト半径の所で光速度に達するが、実際には落下過程で運動エネルギーの多くは熱エネルギーとなり、外部空間を高温に保つ事に使われる。そのため我々の宇宙の落下速度も高速とはいえ、光速度よりは相当に遅い。
他の銀河も我々とほぼ同速度で落下しているので、相対距離は変わらない。
上図では宇宙の中心核を便宜上、図示しているが、我々の宇宙空間は事象の地平面で終わっており、その先の中心核は我々の世界には存在しない。
光路は可逆的だ。Bから出た光が曲げられてAに達する光路が出来たとすれば、逆にAから出た光は同じ光路を通ってBに行く事ができる。しかしこれは通常の時間スケールでは問題ないが、宇宙スケールでは片道100億年以上かかることも普通にある。
現時点での我々の空間座標から出た光は、空間構造から予約された光路を通って中心核に向かう。しかしそれが到着するのは数百億年以上先の事だろう。
この予約された光路を逆にたどって、遠方銀河の光が現在の我々に届いている。それは数千年、数億年、数十億年以上昔に発せられた光が、ようやく我々に届く。
つまり我々と中心核を結ぶ予約光路というのはその瞬間にだけ存在し、その光路に過去に存在した天体が発した光が長い時間をかけて我々に届いている。我々はその過去の景色を見ていることになる。しかしこれは確定した現在形であり、実際の世界だ。
具体的には我々の銀河から発せられた光が最終的に中心核に至る光路が基本になる。これは未来形であり予約光路と呼んだものである。
この予約光路を逆流してきた光を我々は観測している事になる。しかし中心核から事象の地平までは我々の世界ではない。我々がぎりぎり観測できるのは事象の地平面近くから我々側の予約光路上に有る天体等からくる光である。